歯科診療と画像の利用

◎先生のMEDIA PACS(メディアパックス)導入の進め方は、とてもユニークですよね。それが診療ポリシーや画像利用の考え方とどう関わっているのか。まずそのあたりからお伺いしたいのですが…

山本先生僕が進めているのは「納得診療」。患者さんが、「わけもわからず治療される」「わからないけど削られる」という思いをしない歯科診療です。そのために力を入れてきたのは画像を見せて説明することです。
 当院では「治すか、治さないか」の合意形成を行うコンサルテーションは特に設定してません。相互理解や合意形成に必要な要素は、治療前の<診査・診断・説明>の中にすべて入れています。初診で画像を撮り<診査・診断>の段階では、悪いところを全部ピックアップして「ここはこう、ここはこういう状況です。治さないと悪くなりますよ」というお話をします。治療が必要なところを全部「画像」で映し出し、それを一緒に見ながら1つずつ状況を説明し、説明や応答内容のポイントを画面上からタッチペンで書き込んでいく。このプロセスを踏むことで、患者さんには「治さなければならないところ、治さないと悪くなるところ」を理解・納得していただけます。

 だから次の<説明>段階でチェアにいるのは、「治してほしい」と希望する患者さんです。そこで、お勧めできる治療法をすべてリストアップし、それに対応した資料画像や模型を使って治療法の説明をするので、コンサルテーションは「どんなふうに治しましょうか」という話で済んでしまうのです。

◎医療安全や説明責任ということを強く意識したコンサルであり、画像利用のスタイルでもありますね。

山本先生軸足はそこに置いてます。当院がこれまで大きなトラブルもなくやって来られたのは、開業以来ずっと全チェアでVisual MAXを使ってきたからではないかと思います。「1根1根から診ていく歯科医療」という体制を強化する目的で、ここ5年間でCAD/CAM、PACS、CT装置、マイクロスコープの順で導入しました。

CTより先に導入したから、
MEDIA PACSは、
CT画像の価値を高めるということが
わかったんです。

CT画像を有効に活用したくて、CTよりも先に MEDIA PACSから導入

◎CT装置よりもPACSを先に導入されたのは、何か特別な狙いがあったのですか?

山本先生いえ、CTを買う資金がなかった。その前段から言えば、インプラント治療をスタートしてCTの必要性を感じ、医科病院にCTの撮影を依頼していました。ところが、VR(3次元画像)やMPR(任意多断面再構成画像)で操作ができなかったり、ビュワー操作が大変だったり、診療や説明の流れの中にうまく組み込めなかったりで、せっかくCTを撮ってもらっても、思ったようにCT画像を活用できないなという結論に至った。その一方で、CTを見たい!CTで見たい!という気持ちはどんどん膨らんで・・・・。CTが見られるツールを何とかしようと気持ちをリセットして探していたら、 MEDIA PACSと運命の遭遇をしたんです。

◎どんなところに「運命」を感じたのでしょうか?

山本先生画像の扱いやすさ!今まで使ってみたCTビュワーと比較して、一番操作が簡単でした。VRやMPRの画像操作をさせてもらったら、これも大満足。CT画像を期待した通りに扱える。それも理屈ぬきに感覚的に扱える操作性の良さ!僕が望んでいたのはこれなんだと思いました。

 僕は設備導入で肝に銘じていることがあります。それにも照らし、いけると判断して2009年に導入したんです。

◎すでにその時点でPACSの全チェア配備まで想定して導入を決断されたということですか?

山本先生機器を導入する時には、いつも先の展開を考えて行います。

山本先生が設備導入で肝に銘じていること

  • 医療の現場では操作が難しい機器は、絶対使われなくなる。
  • 特定のチェアでないと利用できないという設備設定はNG。画像機器なら、すべてのチェアで同じように見たい。
  • 僕はITの申し子世代。絶対必要になると感じた最新機器は積極的に導入する。

CTを入れてもMEDIA PACSは無用にならない

◎PACSを先に導入してCT画像を扱うという運用はいかがでしたか?

山本先生大正解でした。MEDIA PACSは、CT装置を買わずにCT画像が見られる最善のツールだと思います。依頼先の病院が撮影するCTで間に合えば、CT装置がなくてもMEDIA PACSで歯科に必要なCT画像の扱い方ができる。逆にMEDIA PACSでできないことは、インプラントの埋入シミュレーションぐらい。でもそれは専用ソフトを入れればいいだけです。
 うちの場合はPACSを入れたら、依頼するCT撮影の枚数がどんどん増えて、このままいくと外注ではきつくなると感じ、1年足らずでCTを導入しました。

「資料制作もここで行います」 カウンセリングルームのPACSフォーメーション

◎その1年間はどんな意味を持ちましたか?

山本先生MEDIA PACSの本領や潜在能力を知る絶好の吸収期間になりました。CTビュワーの機能だけがすごいのではない。その実体は、歯科で使うあらゆる画像を扱えるように考えられた強力なコンサルテーションシステムと、画像管理システムを1台に統合したシステム。
 予感はありましたが、その1年間がリードタイムになり「CT装置を入れても、MEDIA PACSは無用にならない」「CT装置の付属ソフトよりMEDIA PACSのほうが画像を扱いやすい」「MEDIA PACSはCTの価値を高める」、そういうことがわかった。VR(3次元画像)をくるくる回しながら、同一画面上に、パノラマ、デンタル、口腔内写真を表示できるビュワーシステムなんて、どこにもないですからね。
 それと、CTより安価といっても価格が立派なので、MEDIA PACSを入れると、ものすごく考え、ものすごく努力するようになる。この波及効果がまた強力で、これを僕は「MEDIA PACSインパクト」と名づけ、重要な意味を持つ費用対効果として高く評価しています。歯科医師の僕をこんなにドライブしてくれる歯科システムは初めてです。

◎いろいろ考えたことで、CTを導入する時に反映されたことはありますか?

山本先生あります。「CTをインプラント以外にも活用する」「チェアでPACSを使いたい」ということの実践対応ですね。そこで、画像はすべてMEDIA PACSにインポートして使い、すべてのチェアのモニターでPACSの画像が見られるように展開可能な設備投資をしました。画像の中核システムとして活用するためです。

CT3次元画像のインパクトをMEDIA PACSで全チェアへ!!

◎2年間でMEDIA PACSの全チェア配備までつき進んだ、一番の理由は何ですか?

山本先生 CTの3次元画像です。CTの3次元画像を利用してわかったのは、3次元でしか見えない世界があること。パノラマやデンタルレントゲンなど2次元画像を利用した説明では、画像から見えない部位は「こうなっていると思われる」という説明になる。そこがはっきり見えるCT3次元画像を使えば、「ほらこうでしょう?」という説明に変わる。3次元と2次元では情報の意味も、情報の量も根本的に違うからです。だから、治療設計自体も大きく変わってきています。  僕が導入した最新のコーンビーム式の歯科用CTは、ミクロンレベルの空間分解能によって歪みの少ない繊細な3次元画像で目視できます。だからインプラント以外にもどうしても使いたいという気持から、「インプラント・根治・歯周病」をターゲットにCTの運用を拡大しています。もうCT=インプラントではありません。現在の体制になった2011年10月以降は、1ヵ月で平均20人以上のCT撮影を行っています。  また、保険診療において「病巣の広がり、位置関係の特段の確認の必要がある」と診断した場合には、「安全の確認のため健康保険でCT撮影が行えますが、どうします?」と対応できる設備環境も整いました。

◎PACSは、医療安全推進の主導役というわけですね。

山本先生非常に重要な役割を果たしてくれています。

チェア1台1台に
PACS × Visual MAXで
画像利用の相乗効果

まったくスムーズな画像管理

◎画像管理ということではどんな印象をお持ちですか?

山本先生まったくスムーズに管理できる。これも大きな安心材料です。両親が同じ敷地内で医科病院を運営しているので、医科の画像規格はすべてDICOM(ダイコム=医用画像の国際標準規格)で運用され、DICOM画像を映し出すビュワーソフトはすべて「PACS(パックス)」という一般名詞で呼ばれていることは知ってました。MEDIA PACSはDICOMで運用するシステムですが、高度なDICOM変換システムを標準搭載しているので、撮影機器によって画像規格がバラバラでもすべてDICOM化して取り込める。

 検索システムも膨大な画像点数の利用を想定されているので、どんどん画像が増えてもマウスのクリック操作だけで画像を次々呼び出せる。これが快適です。  画像データは、専用のデータセンターで保存管理される方式なので安心ですが、僕は性分上、そのバックアップとしてNAS(Network Attached Storage=コンピュータネットワークに直接接続して使用する補助記憶装置)も利用して管理しています。

イレギュラーの患者さんから学ぶこと

◎こういう対応もできるという事例はございますか?

山本先生2次元レントゲン画像の診断をもとに受けた治療の不調を訴えて、当院に相談に来られる紹介患者さんが増えてます。見えない部位に問題があるとしか考えられない場合は、保険でのCT撮影をお勧めし、CT撮影をすれば、歯根が詰まっていたり、3根だったと思っていたものが、実は4根だということが判明する。そうしたイレギュラーの患者さんに対するMEDIA PACSの利用は、うちの診療レベルを客観的に把握できる機会となって、スタッフの意識レベルを押し上げ、モチベーションを高めてくれます。

歯科医の僕が助けられるという特別な感覚

◎もしかしてこれもPACSのせいかな!? と感じられるようなこと、ありますか?

山本先生PACS導入後、治療についての説明が「こうだからこう治療しますよ」という進み方になったからなのか、あとで「何でこうなったのですか?」と言われることがありません。MEDIA PACSを使って画像を示しながら説明することが、「僕はここまであなたのことを考えて治療してます」というふうに理解され、それが自分を守ってくれるように作用する。そんなこと考えてもいなかったのにふと気がついたのは、「この機械に自分が守られているのかな」という感覚。自然とそうなる機械なんですね。それは、歯科医療の現場ニーズを深くふまえたシステムだからだと思いますね。
 このクリニックで僕がやらなければいけないのは、2次元画像だけ見せてはダメなんです。3次元のVR画像をくるくる動かして、「これがあなたの骨格ですよ」と説明して、説明した画像をVisual MAXに取り込んで、画像の上から説明や絵を書き込んで…というのが僕のスタイルです。MEDIA PACSは、ものすごく考えてつくられているから、いろんな機能を使ってみたくなる。使ってみると、満足が深くなる…患者さんからは、「先生、すごいシステムですね」「こんなところまで見えるんだ!」とよく言われますし…。楽しみはこれからです。

<MEDIA PACSの効用 山本裕康先生の中間報告>

山本先生CT画像に対する僕の評価は、すべてMEDIA PACSで扱った場合の評価ですが、実際にはVisual MAX の効果も加味されたものに対する感想です。

運用面

  • 「CTで撮って、MEDIA PACSで映し出す」はCTの価値がより高まる黄金の運用方程式。初診でCTとX線を撮って、患者さんと一緒に画像を見ながら説明して診療を進める。
  • CTは「インプラント・根治・歯周病」をターゲットに利用。イメージとしてはすべての患者さんにCTを使いたい。
  • 画像利用のパターン化はしない。患者さんの症例に対応して、画像の見せ方も説明の仕方も治療方針も決まっていく。パターン化できないから画像をサクサクと動かせないと対応できない。MEDIA PACSの画像機能はそういう任意性、自在性、即応性が大変よく考えられている。
  • 古いか新しいかではなく、どういう立ち位置で診療していくかで診療の価値は決まる。それを考えて実践する表現ツールとしてMEDIA PACSはなくてはならない存在。

顕著な効果

  • CT3次元画像による精密な検査・観察が可能になり、治療設計自体が大きく変わってきた。
  • CTデータを持っていると無用な治療をしないですむ。
  • 「情報量が一挙に増える」「その情報をみんなで目視できる」ことによって、予備知識がすさまじく増えた状態で患者さんに接することができる。
  • 「こうだから、こういう治療をお勧めします」という説明に変わって、患者さんの迷いや不安がきわだって減少。
  • MEDIA PACSのデータ保存法は、震災にあって医院が壊れてもデータがなくならない。
  • 診療精度・診療品質の全体的な底上げ、格上げに貢献する。
  • 「悩むことがなくなる」「詮索することがなくなる」「ストレスがなくなる」「時間が短縮される」・・・こういう実感が、実は重要な導入効果だと思う。

ヒロデンタルオフィスのMEDIA PACSフォーメーション

ヒロデンタルオフィス 愛知県岡崎市 歯科医師2名 歯科衛生士4名 保育士/歯科助手2名 歯科技工士1名 受付3名

ヒロデンタルオフィス
山本 裕康 院長